今も息づく“昔ながら”の味 ― トバコ・マンデリン
マンデリンの象徴、トバ湖の恵み
インドネシア・スマトラ島北部に位置する北スマトラ州。その中心に広がるのが、TOBA(トバ)湖です。赤道直下に位置し、南北100km・東西30kmというスケールを誇る世界最大のカルデラ湖であり、マンデリンコーヒーのふるさとの象徴でもあります。
湖面の標高はおよそ900m、そしてその周囲は標高1,800mにも及ぶ高原地帯。涼やかな気候と頻繁に立ちのぼる霧、さらに乾季にもたまに降る雨。この独特な自然環境が、マンデリン特有の奥深い味わいを育んでいます。年間降水量は2,500〜3,000mmと多めですが、それこそが香味の秘密かもしれません。
歴史に刻まれたマンデリンのルーツ
17世紀末、オランダによってアラビカ種のコーヒーがインド経由でスマトラにもたらされました。当時はティピカ種が中心で、ジャワ島・スマトラ島のプランテーションで栽培され、やがてヨーロッパへと富をもたらします。
しかし20世紀初頭、「さび病」の流行によりアラビカは壊滅。多くの農園がロブスタ種に転換される中、トバ湖南岸のリントンからさらに南にあるマンデリン(MANDAILING)地区に、わずかにティピカ種が生き残っていたのです。この地に暮らすバタック人の一族、マンデリン族がその栽培を続けていたと伝えられています。
本物のマンデリンを、いまふたたび
1990年代以降、海外の需要増加にともなってインドネシア産コーヒーの生産は拡大しましたが、それと同時に標高の低い地帯ではカチモール系の新品種が広まり、かつてのマンデリン特有の香りやコクが次第に薄れていったと言われます。
そうした時代の流れに逆らうように、「TOBAKO MANDHELING」は、トバ湖南岸のリントン地区で今も残るティピカ系の古木にこだわり、標高1,200m以上の豆を丁寧に買い付け、精選。かつてのマンデリンが持っていた、深いコクと豊かな香り、そしてどっしりとしたアフターテイストを今に伝える一杯です。
